M1村田宏彰公認会計士事務所
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ぼくの飼っている猫のピートは、冬になると決まって夏への扉を探し始める。
彼は、家に12もあるドアの、少なくともどれか1つが、夏に通じていると固く信じているのだ。
そして、かくいうぼくも夏への扉を探していた。
あなたなら、どんな気持ちになるだろう?
もし、最愛の恋人には裏切られ、仕事は取り上げられ、生命の次に大事なものを騙し取られてしまったとしたら・・・・。
ぼくの心は冬そのものだったのだ!
そんな滑り出しで話が始まるのは、米国SF作家の巨匠ロバート・A・ハインラインの名作『夏への扉』。
この本に出てくる猫のピートは、どのドアを開けてみても外は寒い冬なのだけれども、それでもどれかのドアで夏に行けると信じ、試してみたがってしかたがない習性を持っています。
1つがダメでも、すべてのドアを試してみるまでは納得せず、人間用ドアまで開けろと飼い主にまとわりつく。
どんなに繰り返そうと、夏への扉を探すのを決してあきらめようとはしません。
何とかしたくても自分ではどうにもできなかったり、追い込まれて八方ふさがりになってしまうことがあります。
こんなときに、信念があればもう少し頑張れる、やり方を変えてチャレンジすれば乗り越えられる、そんな気がします。
この頑固な猫が、私にはとってもかわいく思えるのです。
未来は、必ず過去に優る。
人間はその環境に順応し、徐々に環境に働きかけ、新しいより良い世界を築いていく。
誰がなんと言おうと、世界は日に日に良くなり優りつつあるのだ。
そうはっきり謳い上げることによって、読者を勇気づけてくれる本を、私は他には知りません。
そしてもう1つ大切なことも、この小説は教えてくれます。
人生という大事なドアは、自分の手で開けなくてはならないということを。
息苦しい毎日の中でじーっと黙って待っていても、誰もドアを開けてくれない。
自分で開けないとドアの向こう側には行けない。
もちろん、「向こう側」に何があるかなんて知らないし、考えてもわからない。
でも、このドアを開ければ何かがある、光があるんだ、と信じきることで道が開けるのでしょう。
行き詰まりや閉塞感―――言葉は何でもいいけれど、その扉を開けるのは誰でもない、自分自身だということです。
未来への希望と、正直で誠実な人間への暖かいまなざしに、心温まります。
そしてこの小説は、こう締めくくられています。
「ピートはいつまでたっても、ドアというドアを試せば、必ずその1つは夏に通じるという確信を、棄てようとはしないのだ。
そしてもちろん、僕はピートの肩を持つ。」
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