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M One News 14-02           2014/01/01 海外財産調書制度

 国外財産調書制度がいよいよ始まる。
 これは、年末において5,000万円超の海外財産を所有する個人に対し、その海外財産の詳細を、確定申告期限の3/15までに税務署に提出しなくてはならないというもの。
 2014/01/01以降提出分から適用ということは、2013/12/末で5,000万円の時価があるかどうかが、判断基準ということだ。
 
 国税庁によると、2012/07~2013/06までの1年間で所得税の平均申告漏れ額は1件839万円であるのに対し、海外取引者だけに絞ると、1件1,551万円に跳ね上がるという。
 そのため従来から、金融機関から提出される海外への送金調書・海外からの送金調書を重点的に調査してきた。
 ただ、海外で授受されると把握しようがなく、限界があった。
 
 国際課税は、人や資本がグローバル化する過程において発生するTAXの奪い合いという、国どうしの租税競争という側面をそもそも持つ。
 
 
 が、それをはねのけたのが、2008年に発生した2件の国際的な脱税事件。
 
 1件は、2008/02にリヒテンシュタインの銀行の元従業員が1,400名の顧客情報をドイツの情報機関に500万€(当時約8億円)で売却した事件。
 各国で調査が開始され、ドイツでは有名な実業家の脱税事件にまで発展した。
 日本にも情報提供され、帝京大学の元総長の相続財産15億円申告漏れが発覚。
 
 もう1件は、スイスUBS銀行が米国人顧客に対して脱税指南をしていたことで、米国課税当局がUBS銀行に対して米国人顧客の情報開示を正式に求めた(召喚状発行)事件。
 この事件は両国の外交問題、さらにはスイス議会・裁判所まで巻き込むまで発展したが、2010年に両国間で租税条約を改正し、スイスが情報提供する形で政治決着。
 この過程でも、米国人富裕層の一部が制度を悪用して脱税をしていた事実が発覚した。
 
 
 さらに、リーマンショックが追い打ちをかける。
 2008/秋の世界的な金融危機発生により、多額の財政出動を迫られた各国政府は歳入不足を補おうと、タックス・ヘイブン(軽課税国)や情報交換に消極的な国に対して厳しい姿勢を鮮明に打ち出した。
 金融システムの安定化の観点からも、マネー・ロンダリングを含む不透明な資金の流れが問題となった。
 
 
 こうしたことから、2009/04のG20サミットでは「銀行機密の時代が終了」と宣言、政府間での情報交換の新しい基準「国際的に合意された租税基準」が策定された。
 その特徴をざっくりまとめると、
 ・他国のために情報収集義務を負う
 ・要請を受けた国は、金融機関保有情報まで開示する
 の2点。
 
 現在、このOECDの新基準に基づいて、租税条約が多数改正・締結されている。
 
 
 この流れを受けて、タックス・ヘイブンとの間では租税条約を締結しない方針だった日本政府もその方針を転換し、2009年以降、ケイマン・バミューダ・バハマ・マン島・ジャージー・ガーンジー・香港などのタックス・ヘイブンとも租税条約を締結し、情報交換によって日本人の海外財産の情報を取得できる体制を整えている。
 ナチ戦犯の情報開示を拒否したこともあるスイスとて例外ではない。
 改正された日本とスイスの間の租税条約は2011/12/01に発効、情報交換は2012/01/01以降の年度から開始されている。
 
 この情報交換には、「要請に基づく情報交換」「自発的情報交換」「自動的情報交換」の3種類があるが、実際、情報交換件数はうなぎのぼりで、しかも、日本から海外への情報交換の要請件数は海外から日本への件数の約4倍だという(2012/04~2013/03。国税庁発表)。
 
 
 いわば外堀を埋められている状態だ。
 こうなってくると、知らぬは納税者本人だけかもしれない。
 罰則もあるので、気をつけたいところだ。

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