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M One News 22-01           2022/11/26 副業節税が封じられる!?

 2022/08/初に国税庁から公表されたパブリックコメントには、多くの異論が集まり、結果として、国税庁は2022/10/07に改正案を修正することとなった。


 国税庁としては、副業節税封じをしたいのが本音だったと思われるが、通常多くても数百件のところ、今回は7,000件以上と、あまりの異論の多さに、方針を変更せざるを得ないという異例の事態となった。

 

 

 その異論噴出した改正案の内容は、

・売上300万円以下の事業を雑所得とする

 

 つまり、売上300万円以下の事業は、事業所得となる「事業」ではないから、損益通算などを認めないというもの。

 

 損益通算ができないということは、給与と事業赤字を相殺して所得税を還付させることもできなくなることを意味するのだが、金額一律判断とあまりに乱暴なうえ、副業を推奨する国の方針にも反する。

 

 そもそも、最高裁判例(1981/04/24)では、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう」と示されている。

 

 2021/06の「税務大学校論叢(ろんそう)」に掲載された税務大学校の柿原勝一教授の論文を一部訂正して案として国民に提示したようだが、寝耳に水だった国民がビックリした形だ。

(注1)論文 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/102/01/01.pdf

 

 

 上記ドタバタはあったものの、結局、金額一律判断から、帳簿有無判断へと、事業所得として認める基準へと変わった。

 まとめると、以下のとおり。

 

 帳簿があるかないかで、事業所得 or 雑所得と判断されるということだ。

 2022年からの適用となるから、実務上の影響は大きい。

 

 

 とりあえず、胸をなでおろす事業者も多いと思われるが、安心してはいけない。

 そのポイントは2つ。

 

(1)帳簿付け

 1点目は帳簿付け。

 このドタバタで、帳簿付けの意識がより浸透した結果となったため、帳簿付けはより求められるようになったと言えるからだ。

 ご存じのとおり、帳簿には、日付・取引先名・金額・内容などをすべて記載することとされている。

 そして、税務調査時に帳簿の提出が無い場合はペナルティを追加することも、2022/10/28に発表された。

   https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_01.pdf

 

 インボイス制度に向けて、最初から帳簿付けの啓蒙効果を狙っていたのかもしれないと思うほどだ。

 啓蒙と同時にあわよくば副業節税封じを狙った、という見方は、うがちすぎだろうか。

 

 

(2)本人の事業努力

 2点目は、本人の事業努力。

 事業とは、本人の意思によって行われる主観的なものであるため、国税庁はさまざまな観点から総合的・客観的にその事業性を判断することとしている。

 

 最高裁判例では、「営利性」や「反復継続性」が挙げられているが、「営利性」は黒字を意味し、「反復継続性」は数年間赤字なら(事業廃止も含め)何らかの対策を打つはず、ということ。

 平たく言えば、赤字なら売上アップを図って黒字化を図るだろうし、黒字ならその成功要因を分析してさらなる黒字増加を目指すであろう。

 その本来の努力もせずにTax還付に励むケースに対しては、国税庁は「事業」とみなしたくないところ。

 

 パブリックコメントを経て改正された所得税基本通達35-2解説では、その点を踏まえ、帳簿が保存されている場合でも、以下に該当する場合は、個別に判断するとしている。

 

【転載】

① その所得の収入金額が僅少と認められる場合

 例えば、その所得の収入金額が、例年、300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。

 (注)「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。

② その所得を得る活動に営利性が認められない場合

 その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます。

 (注)「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

 

 つまり、上記2点に特に該当する場合は、税務調査が行われ、事業性を調査されることになろうが、前述したように、総合的・客観的に判断されるため、PDCAやマーケティングなどの事業努力を当然に行っていれば、事業実態に表れるから、何ら怖いことはないと言えよう。

 

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