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M One News 22-03            2022/12/05インボイス制度の概要②(免税事業者向け)

 消費税課税事業者向けのインボイス制度の概要などは、M One News 22-02「インボイス制度の概要①」で説明しましたが、実は、消費税免税事業者の方が影響は大きいのです。

 

 知らずに放置すると、取引先を失うリスクも!?

 そのため、免税だからといって知らないでは済まされない重要な制度と言えます。

 

 どのくらい影響が大きいかは、売上先の立場に立って考えてみればわかります。

 M One News 22-02「インボイス制度の概要①」の「仕入先・外注先が免税事業者の場合の措置」の項を見てください。

 そこで挙げた例では、外注費(=当社の売上)880万円に含まれる消費税80万円が、まるまる買い手の負担になってしまうのです。

 

 そうなると、買い手は、免税事業者の御社に対して、適格請求書発行事業者(=課税事業者)になるよう求めたり、値下げを求めたりすることが想定されます。

 もしかすると、他の取引先に変えられてしまうかもしれません。

 

 まとめると、(消費税課税事業者として)消費税負担が増えるか、(取引先を失って)売上が減少するか、のどちらかを選ばざるを得ないということです。

 まさに究極の2択。

 

 こう見てくると、国は零細企業をつぶす気か!?と気色ばむ事業者もいることでしょう。

 ただ、ちょっと待ってください。

 

 もともと、消費税制度は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額を税務署に納付する、という幅広く税負担を求めるもの。

 そこには、多く消費するほど多く負担すべきという、公平性の考え方が反映されています。

 ただ、1989/04の消費税導入時に、零細事業者への配慮として政治的に決まった、いわば「お目こぼし」が、2期前の課税売上が1,000万円以下なら免税とするという免税点制度で、免税事業者はいままでその恩恵に浴してきたわけです。

 そのお目こぼしの範囲を少なくして、より公平にしようというのが、インボイス制度なのです。

 

 「より公平に」は、消費税を既に負担している(=割を食っている)売上先からすれば、当然のこと。

 「自分が受けてきたお目こぼしが減るからといって、なぜ御社の消費税を当社が負担しなければならないのか」と売上先が思うのは、自然なことでしょう。

 したがって、自分がどう思うかはいったん横に置き、売上先の気持ちを、まずは理解する必要があると言えるでしょう。

 

 では、取引先の気持ちを理解したうえで、自社が究極の2択を迫られる中、何を判断基準に選択すればいいのか。

 その判断基準は、ずばり「メインの顧客は誰か?」。

 

 つまり、売上先が課税事業者なのか、あるいはそうでないのかによって、対応が変わってくるということです。

 

 以下、メインの顧客が課税事業者のケース・免税事業者のケース・一般消費者のケースの、3パターンで説明します。

 

 メインの売上先が課税事業者の場合は、原則として、課税事業者として適格請求書を発行する方向で検討すべきです。

 

 理由は、既に説明したとおり。

 きちんと理解せずに消費税負担をケチって、売上を失くしてしまっては、元も子もありませんからね。

 

 実は、もし売上先が簡易課税であれば、当社が免税のままでも、売上先の消費税負担は変わらないのですが、売上先が簡易課税かどうかは不明ですし、売上先の事業拡大により、売上5,000万円超になるととたんに簡易課税は適用できなくなるので、やはり課税事業者を採用する方向で考えるべきでしょう。

 

 (注1)簡易課税とは、一定の計算式で簡単に消費税額を計算するため、適格請求書であっても無くても、消費税額は変わらない制度。

 

 メインの顧客が免税事業者なら、いまのところ、影響はありません。

 

 ただ、顧客の事業拡大により、顧客が消費税課税事業者になったら、その後の取引の足かせになるリスクが残ります。

 

 一般消費者を対象に商品販売やサービス提供をしている場合は、ほぼ影響はないと言えます。

 

 ただ、仕事で利用されることの多いタクシー事業者や、接待利用の多い飲食店は、利用者は個人でも、社内精算を通して、支払者が事業者になるケースが多いと思われるため、適格請求書発行事業者になることで、顧客離れを防ぐことができるでしょう。

 

 課税事業者の立場からすれば、事前に確認できる料亭はまだしも、流しのタクシーでは、個人タクシー選別の傾向が強まるかもしれません。

 噂では、区別できるように、タクシー空車のランプの色を変えるとか変えないとか。

 

 以上を、まとめてみました。


 (注1)「メインの顧客」は、最大の顧客というより、売上金額の多くを占めるのは誰かという視点でとらえてください。

 

 その他にも、適格請求書発行事業者に登録すると、課税事業者になり、経理上の手間が増えるだけでなく、消費税申告義務が発生します。

 また、消費税分だけ、資金繰り上も考慮しなくてはならなくなります。

 

 ただ、これらのデメリットの一部は、6年間緩和される措置が取られています(M One News 22-02「インボイス制度の概要①」の「経過措置期間は、仕入税額控除可能」の項を参照)。

  

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