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M One News 23-10             2023/09/12売り手負担の振込手数料の処理

 

 


 売上代金入金時に、金融機関の振込手数料が差し引かれることがありますが、何故でしょうか?

 取引先によってまちまちだったり、あるいは、内容によってまちまちだったり。

 混乱するところです。

 

 

「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。
ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」(民法485条)

 

 したがって、振込手数料は支払者(買い手)が負担するのが原則です(契約で定める場合を除く)。

 

 

 にもかかわらず、支払者が振込手数料を差し引いて代金を支払ってくるために、結果的に売り手が振込手数料を負担することが、何故あるのか。

 

 一言でいえば、商慣習です。

 かつて、商売人は、売込み~契約~納品~現金回収の一連の流れをすべて自身で行っていました。

 それが、売込み~契約が営業マン、納品が運送業者と、各機能の担当が分かれて進化していく中で、現金回収も口座振込に変わっていきます。

 その方が、売り手としては効率的なためです。

 

 ただ、支払者(買い手)からすると、売り手の都合で振込手数料を自分が負担するのは、おかしな話。

 こうして、売上代金から振込手数料が差し引かれることになりました。

 

 昔から存在するビジネスほど、この商慣習が色濃く残っている感じがします。

 法律上の原則はどうであれ、売り手・買い手の力関係に最終的には左右されるのです。

 

 

 会計上は、振込手数料をどちらが負担するかは考えず、負担が発生したらどう処理するのか、からスタートします。

 以下、売り手が振込手数料を負担するものとします。

 

 納品~代金回収の業務の流れにおいては、売込み~納品までが営業活動、納品後~代金回収までが財務活動と位置付けられます。

 そのため、代金回収時に生じた振込手数料は、財務コスト。

 したがって、支払手数料や雑費などの科目で仕訳することになります。

 

 

 税務上は、どうなのか。

 インボイス導入後は、インボイス保存要件と帳簿記載要件の2つを満たさなければなりません。

 ところが、インボイスを保存しようにも無いので、買い手にインボイスを発行してもらうしかありません。

 1件僅か数百円に1件ずつ返還インボイスを作成するという膨大な事務処理が買い手に発生してしまうことになってしまいます。

 

 そのため、売上値引きで1万円未満ならインボイス不要と、2023年度税制改正で手当てされました(M One News 23-01「2023年度税制改正」の3点目)。

 

 手当てしてもらったのは実務上助かりますが、逆に言えば、売上値引きで処理しないとインボイス不要にはならない、ということです。

 

 

 まず、売り手としては、支払者(買い手)に振込手数料負担をお願いしていくことになりましょう。

 

 そのうえでそれでも、売り手が振込手数料を負担することになった場合は、

・仕訳・・・・・雑費等で処理

・消費税上・・・「課税売上の対価の返還」(値引きのこと)で処理

することになります。

 

 売上が軽減税率適用の業種の場合は、その軽減税率での処理が必要となります。

 食料品小売業などは、気をつけたいところです。

 

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